キカガク プラットフォームブログ

株式会社キカガクのプラットフォームブログです。エンジニアやデザイナー、プロダクトマネージャーなどが記事を書いています。

CTO としての 3 年間 ~組織作りと開発の狭間で~

はじめに

皆さんこんにちは、株式会社キカガク CTO の祖父江です。今回はメンバーからの発案で「全員採用!発信するぞ!」ということで弊社プラットフォーム部(プロダクト開発に関わるチーム)のメンバー全員でブログを執筆します。文章を書くことから離れておりますが、久しぶりのブログを全力で駆け抜けていきます。こういったポジティブな発案がチームから出てくることが嬉しいです。

今回は 2020 年 4 月 CTO に就任して 3 年半が経過したため、これまでの振り返りとこれからの展望を書きます。読者は「これからプロダクト開発組織を立ち上げる方」や「初めて CTO を任された方」を想定しています。私自身は未来がまったく見えない中で手探りで進めてきたので同じ境遇の方に読んでいただきたいです。

要約(3 行でわかる)

  • 組織を変える 3 つの方法は「組織構造、人材採用、教育」で、即効性がある組織構造から変革してみる(組織構造は事業構造と整合性を取る)
  • CTO は技術(エンジニアリング) × 経営(マネジメント)だがフェーズによってレバレッジの効き方が異なるので、自分の時間を投資するタイミングを見極める
  • 世の中には優秀な先駆者がたくさんいらっしゃるので、目の前に押し寄せてくる「具体」と書籍や記事から得られる「抽象」を行き来し続ける

数値で見るチームの変化

最初にチーム全体がどのように変化してきたのかを具体的な数値を記載することで読みながら頭の中でイメージしていただけるようにします。今回はメンバー、プロダクト、チームの 3 つを見ていきます。

2020 年末 2021 年末 2022 年末 2023 年末
メンバー数 1 4 12 18
プロダクト数 1 2 2 3
チーム数 1 1 3 5

2020 年までは法人様向けのオフライン研修事業をメイン事業として展開しており、コロナを機に研修のオンライン化やプロダクト作成などが始まりました。

メンバー構成

上記に記載しているメンバー数は業務委託込の数値です。2021~2022 年が急激に伸びました。数値を見ても 3 倍の変化がありますが、内部的にも大きな変化がありました。経験者採用です。それまでの弊社では未経験採用が文化としてあり、今も研修事業の講師は未経験での採用も続けています。特に 2021 年末まではプロダクト開発チームでも業務未経験のエンジニア採用を行い、社内で育成する方針を取っていました。しかし小規模チームでの育成の頭打ちと事業成長についていける開発組織を作るためには今のスピードではダメだと感じていました。

キッカケは偶然のリファラル採用でしたが、なぜか「みんな知ってるあのメガベンチャーに新卒入社し US にも在籍していました」「エンジニア歴 10 年でプロジェクトマネジメントも得意です」みたいな明らかに組織フェーズとはアンマッチだが入社を決めてくださったエンジニアが入社してくれました。

ここから開発組織が凄まじいスピード感で整備、成長していきました。そこから経験者採用にシフトし、プロダクト開発速度も爆速になり、運用面でも難易度の高いお問い合わせにも素早く対応できたり、セキュリティ強化など守備力を高める施策への着手、要望難易度が高い機能要望にも耐えられる組織になりました。

あらためて「その組織状況を知っている」「見た経験がある」というのは座学では学べない内容であり、経験豊富な即戦力の方を初期からいかに採用できるかは役員としての責任なんだと学びました。採用の最終面談で口説き落とすスキルも求められます(ここは自戒も込めて…)。

ただチームが大きくなると状況も変化していくもので、経験者を採用していくと組織ピラミッドの中間層が厚くなります。組織としての文化を構築するためには下からの叩き上げや新しい価値観の流入はやはり必要です。そこで来期からは新卒採用に取り組んでいきます。チームとしての開発基盤が整ったこと、育成の余白ができたこと、組織文化構成のために新卒採用が重要なこと、などが理由です。ぜひ 26 年卒の方は来年春先に募集をかけますので応募をお待ちしております。ちなみに現状も長期学生インターンの方が活躍しているのでこれを見ている方で今すぐ働いてみたいという方は面談へお申し込みください!

チーム構成

2021 年までは少人数でしたので単一チームで全員でボールを拾うスタイルで進めていきました。チーム数が少ないと隔たりがないため、情報の浸透やコミュニケーションコストという観点では運用面でやりやすい大きなメリットがありました。しかしプロダクトの成長につれて役割と責任の線引をしておかないと境界線にある曖昧なボールの優先度が低くなり、適切な取捨選択ができません。

チーム構成はおなじみの チームトポロジー 価値あるソフトウェアをすばやく届ける適応型組織設計 を参考にしました。多くの会社がこちらの構成を参考にしているのでチーム構成に迷っている方はまずはこちらの構成がおすすめです。

組織体制

  • Stream-aligned team:プロダクト
  • Platform team:プラットフォーム
  • Complicated-subsystem team:データ基盤、デザイン

の 3 つでそれぞれを分離させています。Enabling team は作っておらず、各チームの有志が担当しているような状況です。Team Topology の概念と異なるところもあるかもしれませんが、重要なのは組織全体の共通言語として会話できるかどうかだと思いますので輪読会などもオススメです。

プロダクト構成

現在弊社では DX/AI 領域の教育プロダクトとして「キカガク」「キカガク for Business」を開発しており、転職採用領域で「キカガク Career」の α 版をリリースしています。

プラットフォーム構想

カンパニーデック

今後は教育という枠組みを人材領域まで拡大していき、「あるべき教育で人の力を解放する」というミッションに向けてさらなるプロダクト展開をしていきます。

組織フェーズ毎の役割の変化

  • CTO は技術(エンジニアリング) × 経営(マネジメント)だがフェーズによってレバレッジの効き方が異なるので、自分の時間を投資するタイミングを見極める

初期 1 年半はチームメンバーもわたし+ 2 名と少数だったため、先頭に立ってゴリゴリとコードを書き、プロダクト仕様や方向性も決め、採用もして、と役割分担などできる状況ではなかったので全部やるでした。ただ溢れるボールも増えてきて計測していませんでしたが開発生産性もなんか悪いなあ…と感じる日々が続いていました。

その中で 2022 年頭に上記に書いた通り大きな転機があり、経験豊富な即戦力が入社したときに自分の振るまいをどうすることが今後の組織成長に最も寄与するのか、にかなり悩みました。一個人としてはまだまだプロダクトも成長段階ですし、エンジニアとしても先頭に立ってさらにレベルアップがしたい。ただ開発組織としての組織作りに全く時間を割けておらず、とりあえず目の前の課題に場当たり的なパッチ対応している未熟な状況…同タイミングで第一子が生まれたばかりで育休をいただいていたのですが、毎日寝不足の中で葛藤する日々だったのを覚えています。

最終的には組織としてレバレッジを効かせるために「マネジメントに注力する」と意思決定しました。これがとても良い意思決定でした。

具体的にこの 2 年間でやったことを箇条書きでまとめます。

  • 組織構造の変更(Team Topologies
  • チームへの権限委譲
  • 毎週の定期 1on1 実施
  • Notion 整備(認知コスト低下)
  • オンボーディング作成
  • 採用資料 / 求人作成
  • 人事評価制度策定

特に「組織構造の変更」「チームへの権限委譲」「定期 1on1 実施」は効果が大きかったです。組織構造を変更しても適切に権限を渡せなければ結局自分が単一障害点となり、物事が前に進みません。ただ完全に丸投げしてしまうと事業戦略との整合性が取れていない意思決定や狭い視野で他の課題を見落としてしまうこともあるので、マネージャー陣とは今でも毎週 1on1 を実施しており、認識合わせを続けています。1on1 は時間をかなり投資することになりますし、体力も必要なのですが絶大な効果があるのでぜひやってみてください。1on1 の型も個人的にできてきたのでこのあたりもまた今度記事にしてみたいです。

権限委譲の失敗談は「任せると言ったのに口を出す」です。ついつい自分のやり方と異なると意見したくなります。ただアオアシでも言っています

自分で、 自分はそうあるべきと決めて進んだ。 自分で掴んだ答えは一生忘れない。

あーだこーだと言うとその瞬間は効率的なときもありますが、背中を預けて任せられる環境を作ることに集中していきたいです。

良質なインプット方法

  • 世の中には優秀な先駆者がたくさんいらっしゃるので、目の前に押し寄せてくる「具体」と書籍や記事から得られる「抽象」を行き来し続ける

公務員あがりで開発組織を見ることも初めてのわたしがこれまで 3 年半組織作りを続けてこれたのは今の時代だからこそであり、優秀な先駆者の方が残してくれたたくさんの記事や書籍で失敗談や概念を学んでこれたからです。またゼロから組織を作る中で具体的に対処が必要な課題を解く機会に恵まれたこともあり、ただの情報から知識に昇華できました。

そこで今回はわたしが大変多く学ばせていただいたブログや書籍の中から激選し、紹介して最後にしたいと思います。

ブログ

書籍

おわりに

今回は CTO としての振り返りをしました。定期的に学びを言語化しておくことで自分の中で体系的になるのでこれからも更新していきます。次はプロダクト開発組織の OKR 設定基準の話や 1on1 の型などの話を書ければと思います。

株式会社キカガクは DX/AI 教育をコアにさまざまな事業で「人の力を解放する」ために日々尽力しています。下記のリンクからお気軽にカジュアル面談へお申し込みください!

ありがとうございました!